エビデンスで教育を考えた

頭が良くなる科学論文を紹介していきます。お勧め商品は楽天ルームで!https://room.rakuten.co.jp/room_12b7a40f6d/items

社会遺伝学の調査が示す仲間の影響力〜遺伝子発現と環境の関係とは?


 社会遺伝学という言葉をご存じでしょうか?

遺伝学と社会科学を融合させたこの学際的な分野では、私たちの行動や社会的特性に遺伝がどのように影響を与えるかを研究しています。最近の大規模調査によると、高校時代の友人や仲間の遺伝スコアが、薬物使用障害やうつ病などに深く関わっていることが明らかになりました。特に、学校の同級生の影響が大きいという結果が示され、私たちの遺伝子が環境によっていかに変化し得るかが注目されています。

社会遺伝学で大規模な調査を行った結果

 社会遺伝学というと聞き慣れないかと思いますが、これは遺伝学と社会科学を融合させた学際的な分野です。この分野では、遺伝的要因が人間の行動や社会的特性にどのように影響を与えるかを研究しています。最近は橘玲さんの「言ってはいけない」で大分世間にも注目されました。この記事を読む上で分野に精通する必要は全くありませんが、大切なことは

DNA配列そのものは環境によって変化しないが、遺伝子の発現は変化する可能性がある

という考えです。これは、例えばうつ病に対する特定の遺伝的素因を持っているとしても、それが社会的交流によって遺伝子発現のレベルで影響を受ける可能性があることを意味します。つまり、遺伝子は運命ではなく、環境とそれがどのように発現するかによって決まるのです。

 さて、当研究は1980年から1998年の間にスウェーデンで生まれた150万人以上の人から得られた結果。医療、犯罪、および薬局の登録情報を使用して、17 歳〜30歳までの

薬物使用障害、
アルコール使用障害、
重度のうつ病、
不安障害

の傾向を調査しました。さらに研究者らは、同じ障害に対する仲間とその家族の遺伝スコアまで調べて仲間の社会的遺伝的影響を深掘りしていったんですね。

 この結果、

・上記で挙げた障害全体にわたって、仲間と家族の遺伝スコアの登録リスクの増加を予測した。

・特に薬物使用障害およびアルコール使用障害に対する影響は、重度のうつ病および不安障害に対する影響よりも強かった。

ということがわかりました。

 興味深いのは、仲間のこれらの影響は

・地理的に近い仲間(近所)よりも学校の同級生に対して強く、

・中学校 (7~16 歳) の仲間よりも高等学校 (16~19 歳) の仲間に対して強い。

・さらにこの傾向は学歴を調整しても残った。

という結果が得られたことです。学歴調整しても残るので、親御様は心配事が増えそうな結果となっております。

 これらの結果がなぜ得られたかについての理由ははっきりとはわかっていないものの、研究者は「個人のリスクを考えるだけでは不十分」と警鐘しています。

まとめ
 というわけで今回は高校の友人があなたに与える影響のお話でしたー。遺伝子自体はかなり変えられないものの、環境は自分の意志で変えやすいです。お心当たりある方は参考にしてみてください。

参考
https://psychiatryonline.org/doi/10.1176/appi.ajp.20230358