中野信子先生といえば、今や押しも押されぬ人気脳科学者。研究の傍ら、作家、評論家などの啓蒙活動も活発な有名人です。脳科学を生かした教育への発言も多いので彼女はウォッチしていたのですが、本書はKindleで月間セールにも選ばれていたので購入しました。Kindleは積読がはかどりますね笑
本書は妬みの感情というのがテーマなんですが、これだけにとどまらず毒親の仕組みや、はては戦争の話まで解説している面白い本です。テレビなどで見る中野先生とは違った部分も覗けるのではないでしょうか。また教育の面としては毒親の話と社会性についてが参考になります。
通常、子供の育児にはオキシトシンというホルモンが重要で、これがあるからこそわがままな子供を辛抱強く育てることができるそうです。(これを人工的に減らすと母親は育児に関心を示さなくなる)ところが、このオキシトシンこそが、毒親の元にもなるのです。子供が大きくなり、いざ独り立ちというときに、過干渉をしてしまう。母親の愛こそが足かせになってしまうのです。
氏は警告します。
「よかれと思って、という気持ちとその帰結とは必ずしも方向を一致させない」
なんとも皮肉な話です。
子供の社会性にも一つの矛盾があることを指摘しています。個人的に正しいと思ってなくても集団をかえりみて振る舞う。これはいわゆる空気を読むという行為ですが、実は子供はこういった行為ができません。不思議に思ったことをそのまましゃべってしまったり。ときには失敗をしながらも協調性を学んでいくものですが、この協調性には恐ろしい暴力が入り込んでくるようでドキリとさせられました。
「協調性の高い人ほど、一度自分の尊厳が傷つけられたと感じたとき、損をしてでも復讐に駆り立てられる」ことがわかっているようです。
こういった、愛の側面を浮き彫りにしていく中でかいまみえるのは、彼女の愛に対する疑問です。
「愛は本当に美しいのか?」
こんな疑問が出るということは、彼女も手痛い失敗を繰り返してきたでしょう。
ひどいいじめを受けたのかもしれない。
全力で愛した男にゴミのように捨てられたのかもしれない。
一度や二度ではないはずです。
中野信子は愛に生きたかった。それでも、脳科学者としての中野信子がそれを許さなかったのでしょう。彼女は、愛に生きる代わりに、理性でもって愛を引きずり下ろすことにしたのです。だから私はこっそり副題を変えました。〜愛を引きずり下ろす快感〜